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Home / BL / 神殿育ちの嫌われΩは、隣国の伯爵αに蕩ける愛を刻まれる / 第21話 休憩室

第21話 休憩室

Author: 甘梨鈴
2025-06-23 17:00:15

「黙れ。いいからさっさと行ってこい!」

「……かしこまりました」

 苛立つレオナールに、これ以上は言っても無駄だと悟る。

 エマは大人しく頷いたが、レオナールは冷ややかに言った。

「貴様が視界に入ると目障りだ。適当なところで引き上げて、あの薄汚い巣へ戻れ。ドブネズミめ」

 レオナールは暴言を吐き、エマをきつく睨んでから、身を翻した。向かった先に、深緑のドレスを身を包んだ令嬢が見える。

「カミラ嬢……」

 何度か見かけたことのある、公爵令嬢のカミラだった。

 薄絹を重ねた背中や肩を露出したカットは、かなり大胆なデザインだ。

 胸元を飾る大粒のダイヤモンドは、レオナールが贈ったものだと噂されている。

 美しいドレスと宝石で着飾り、レースの扇子を手に持って、男達と談笑する姿は、ひときわ目を引いた。

 レオナールが近づくと、歓声が上がり、楽しげに談笑する姿が見える。

 レオナールが、あのように微笑みを浮かべるのは、カミラ嬢にだけだ。

(カミラ嬢と、結婚すればいいのに)

 どうして、婚約者が自分なのだろうと、エマは身の上を嘆いた。

 レオナールを引き立てるために努力しても、成果を褒められることはない。忌み嫌われ、暴言を浴びせられる。

 本当は、まだ挨拶するべき相手がいるのに、レオナールは王族の務めを放棄した。

 エマは仕方なく、一人で外交官たちへ挨拶に回ったのだった。

 レオナールは弱小国などと見下しているが、王子の婚約者にすぎないエマが一人で挨拶に来たことに、ほとんどの者が気分を害したようだ。

 きつい言葉で嫌味を言われ、エマはひたすら頭を下げた。

 挨拶が終わる頃にはかなり疲弊していたが、それでも最後まで接待をしなくてはいけない。

(ちょっと休憩しよう)

 そう思って、壁の方へ移動すると、思わぬ人から声を掛けられた。

「エマ殿」

「あっ、ルシアン様!」

 振り向くと、憧れのルシア
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